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薬の副作用:よくある不都合な反応と報告すべきタイミング
中原 美紗

中原 美紗

薬を飲んだ後に、ちょっとした不調を感じたことはありませんか?頭がぼーっとする、胃がもたれる、皮膚にかゆみが出る……。これらはすべて薬の副作用の可能性があります。副作用は、薬が本来の効果を発揮する一方で、予期せず起こる体への悪影響です。誰にでも起こり得るもので、軽いものもあれば、命に関わる場合もあります。

よくある副作用、どんな症状が出やすい?

薬の副作用は、種類によってパターンが決まっています。最も頻繁に報告されるのは、消化器系と神経系の反応です。

  • 吐き気、胃もたれ、便秘、下痢
  • 頭痛、めまい、だるさ、眠気
  • 口の渇き、皮膚の発疹

これらの症状は、抗高血圧薬、抗不安薬、胃酸抑制薬、鎮痛薬など、幅広い薬で見られます。例えば、オメプラゾール(プロリセック)のような胃酸の薬では、便秘や下痢、頭痛がよく出ます。メトプロロール(ロプレッサー)のような血圧の薬では、眠気やめまい、むくみが報告されています。アプラゾラム(ザナックス)などの抗不安薬は、特に高齢者では「ふらつき」や「混乱」を引き起こし、転倒のリスクを高めます。

なぜこんなに多いのか?理由は単純です。薬は口から入って胃や腸に直接触れ、消化管の働きを変えるからです。また、脳や神経に作用する薬は、集中力や平衡感覚を乱すこともあります。特に、複数の薬を同時に飲んでいる人や、年を取った人は、副作用が出やすい体質になっています。

重い副作用、いつ病院に行けばいい?

すべての副作用が危険というわけではありません。しかし、次の症状が出たら、すぐに医療機関に連絡してください。

  • 呼吸が苦しくなる、喉や唇が腫れる(アナフィラキシー)
  • 広範囲の皮膚の発疹、水疱、皮がむける(スティーブンス・ジョンソン症候群や毒性表皮壊死症)
  • 高熱、リンパ節の腫れ、肝臓や腎臓の機能低下(DRESS症候群)
  • 意識がもうろうとする、幻覚や錯乱が起きる
  • 黒い便や血尿、異常な出血
  • 不整脈、胸の痛み、急な動悸
  • 自殺を考えるような気分の変化

これらの反応は、まれですが、数時間〜数日で急激に悪化します。スティーブンス・ジョンソン症候群は、皮膚がやけどのように剥がれるほど重症化し、命を落とすこともあります。過去には、乾癬の治療薬エファリズムブ(ラプチバ)が、脳の感染症を引き起こして市場から撤退した事例もあります。

がんの化学療法や放射線治療では、さらに特有の副作用が現れます。髪の毛が抜ける、疲労感が強い、感染しやすくなる、血が止まりにくくなる……。これらは治療の効果と表裏一体で、多くの場合、治療が終われば改善します。しかし、骨盤周辺への治療では、性欲の低下や不妊、早期閉経のリスクもあります。

高齢者が複数の薬の瓶に囲まれ、転倒の影が背景に見える様子。

薬と他の物との飲み合わせが危ない

副作用は、薬だけが原因ではありません。他の薬、食品、アルコールとの飲み合わせで、予想外の反応が起きることがあります。

  • アルコールと鎮痛薬(モルヒネ、オキシコドンなど)を一緒に飲むと、呼吸が止まる危険があります。
  • グレープフルーツジュースは、血圧やコレステロールの薬の効果を強めすぎ、血中濃度が急上昇する原因になります。
  • アセトアミノフェン(タイレノール)とアルコールを併用すると、肝臓に重大なダメージを与える可能性があります。
  • 風邪薬やアレルギー薬(フェニラミン)に含まれる成分は、眠気を引き起こすだけでなく、高齢者では認知機能の低下を招きます。

米国では、患者の半数以上が副作用を理由に薬をやめてしまうと報告されています。そのうち、28%が胃腸の不調、22%が眠気やめまい、15%が皮膚の発疹が原因です。薬をやめるのは自己判断ではありません。必ず医師や薬剤師に相談してください。

高齢者、子ども、妊婦は特に注意

年を取ると、体の薬の処理能力が落ちます。腎臓や肝臓の働きが弱くなるため、薬が体に長く残り、副作用が出やすくなります。65歳以上の高齢者は、45〜64歳の成人と比べて、副作用の発生率が3倍以上です。

特に注意が必要なのは、

  • 眠気を引き起こす薬(ベンゾジアゼピン系の抗不安薬)
  • 血圧を下げる薬
  • 糖尿病や心臓病の薬

これらは、転倒や認知症のような状態(錯乱)を引き起こすリスクが高まります。日本でも、高齢者の薬物関連入院は年々増加しています。

子どもや妊婦も同様です。胎児に影響を与える薬は、妊娠初期に使用すると奇形のリスクがあります。薬を飲む前に、妊娠の可能性があるか、子どもに飲ませても大丈夫かを必ず確認してください。

タブレットで副作用を報告する手と、心臓・肝臓・皮膚などの症状アイコンが浮かぶイラスト。

副作用を報告する、なぜ大事なのか?

副作用は、一人ひとりが気づいて報告することで、他の人の命を守ります。米国では、FDAのMedWatchというシステムで、医療従事者が重大な副作用を報告することが法律で義務づけられています。日本では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が同様の役割を担っています。

しかし、実際には、副作用のうち5%以下しか報告されていないとされています。なぜなら、多くの人が「ちょっとした不調だから大丈夫」と思い、医師に言わないからです。

でも、あなたの報告が、他の人に同じ過ちをさせない鍵になります。たとえば、ある薬が特定の年齢層で重い副作用を起こすことが判明すれば、医師はその患者には別の薬を処方するようになります。それが、薬の安全性を高める第一歩です。

副作用を感じたら、次のことをしてください:

  1. 症状をメモする(いつ、どんな症状、どの薬を飲んだか)
  2. 医師や薬剤師にすぐに相談する
  3. 「薬の副作用を報告したい」と伝える
  4. 必要なら、PMDAのオンライン報告フォームを利用する

報告は、患者本人でもできます。誰かのためになる行動です。

薬の副作用を減らすための3つのルール

副作用を完全に防ぐことはできませんが、リスクを減らすことはできます。

  1. 薬の説明書を読む:「よくある副作用」の項目を必ず確認しましょう。薬剤師が説明してくれることもありますが、自分で確認するのが一番です。
  2. 飲む薬を全部リストアップする:処方薬、市販薬、漢方、サプリメントをすべて医師や薬剤師に伝えてください。特に、風邪薬や胃薬、ビタミン剤は、気づかないうちに重複して飲んでいることが多いです。
  3. 薬を勝手にやめない:副作用が怖いからといって、急に飲むのをやめると、病気が悪化する可能性があります。医師と相談して、段階的に減らす方法を決めましょう。

薬は、あなたの体を守るための道具です。でも、使い方を間違えれば、逆に体を傷つけることもあります。正しい知識を持って、安全に使いましょう。

薬の副作用は、必ず起こるものですか?

いいえ、必ず起こるものではありません。副作用は「起こりうる可能性」がある反応です。ある薬の説明書に「30%の人に吐き気が出ます」と書いてあっても、あなたがその30%に入るとは限りません。個人差が大きく、体質や年齢、他の薬の飲み合わせによって変わります。副作用がなくても安心するのではなく、起こったときにどう対応するかを知っておくことが大切です。

市販薬にも副作用があるのですか?

はい、市販薬にも副作用があります。特に、風邪薬や頭痛薬、アレルギー薬(例:フェニラミン)には、眠気や口の渇き、めまい、尿が出にくくなるなどの副作用がよくあります。アスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDsは、胃の出血や腎臓への負担を引き起こす可能性があります。薬局で「これなら安全」と言われても、自分に合うかどうかは別問題です。必ず薬のパッケージに書かれている「副作用」の欄を確認してください。

副作用が出て、薬をやめたら元に戻りますか?

ほとんどの軽い副作用は、薬をやめると数日〜数週間で治ります。たとえば、眠気や頭痛、胃の不快感は、薬が体から抜けると自然に改善します。しかし、皮膚の重度の発疹や肝臓・腎臓の異常は、薬をやめても回復に時間がかかります。場合によっては、入院や治療が必要になることもあります。だからこそ、早めに医師に相談することが重要です。

高齢者が薬を減らすにはどうすればいいですか?

高齢者は、複数の病気で複数の薬を飲んでいることが多く、副作用のリスクが高くなります。薬を減らすには、まず「薬の見直し」を医師と行うことが必要です。どの薬が本当に必要か、どれをやめても大丈夫かを、一緒に検討しましょう。薬剤師に「薬のリスト」を持って行って、重複やリスクのある組み合わせがないかチェックしてもらうのも有効です。薬を減らすことは、生活の質を上げる第一歩です。

副作用の報告は、どこにすればいいですか?

日本では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が副作用の報告を受け付けています。医師や薬剤師を通じて報告するのが一般的ですが、患者本人もオンラインで直接報告できます。PMDAの公式サイトには「副作用の報告」のページがあり、飲んだ薬の名前、症状、日時、自分の年齢などを入力するだけで完了します。匿名でもOKです。あなたの報告が、他の人の命を救う可能性があります。

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