アレルギーで鼻水やくしゃみ、目のかゆみに悩まされている人は、多くの場合、薬局で手軽に買える抗ヒスタミン薬に頼っています。でも、薬剤師のカウンターに並んでいる薬を見ると、ベナドリルのような名前と、サイレックスやクラリチンのような新しい名前が並んでいて、どれを選べばいいか迷うかもしれません。実は、これらはまったく違う種類の薬です。第一世代と第二世代の抗ヒスタミン薬は、同じ目的で使われますが、体への影響は大きく異なります。
ヒスタミンは、アレルギー反応の中心にある物質です。花粉やダニ、ペットの毛が体に入ると、免疫システムが過剰に反応してヒスタミンを放出します。これが鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、皮膚の発疹の原因になります。抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンが体の受容体に結合するのをブロックして、症状を抑える薬です。第一世代は1940年代から使われ、第二世代は1980年代に登場しました。どちらも効果はありますが、体への負担が全然違うのです。
第一世代の代表的な薬は、ジフェンヒドラミン(ベナドリル)、クロルフェニラミン(クロル-トメトン)、プロメタジン(フェネルガン)です。これらは、脳まで届きやすい性質を持っています。分子が小さく、脂溶性が高いので、血脳関門を簡単に通過してしまうのです。その結果、眠気や集中力の低下が起きやすいのです。実際、使用する人の50~60%が日中に強い眠気を感じます。これは、単なる副作用ではなく、薬の仕組みそのものです。
一方で、この眠気の性質が、夜の睡眠を助けるのに役立つこともあります。アレルギーで眠れない人の中には、ベナドリルを就寝前に飲んで、アレルギーの症状と不眠を同時に抑えている人が多くいます。Dr. Linda Coxは、この点について「眠気はデメリットではなく、特定の患者にとっては治療の利点になる」と指摘しています。
効果の発現は早いです。服用して30分ほどで症状が軽減し、急なアレルギー発作の対応には向いています。でも、効果は4~6時間しか持続しません。そのため、1日に3~4回飲まなければなりません。これは、仕事や学校のある日には不便です。また、口の渇き、尿の出にくさ、めまい、認知機能の低下といった抗コリン作用もよくあります。特に高齢者では、転倒や記憶力の低下のリスクが高まります。ハーバード大学のPieter Cohen医師は、長期使用による認知リスクを「低用量のベンゾジアゼピンと同等」と警告しています。
第二世代の薬は、ロラタジン(クラリチン)、セチリジン(サイレックス)、フェキソフェナジン(アレグラ)です。これらの薬は、分子構造が変更されており、脳に届きにくくなっています。血脳関門を通過する量が極めて少ないため、眠気の発生率は10~15%と大幅に低下しています。
効果の持続時間が長く、1回の服用で12~24時間効果が持続します。つまり、1日1回で済むのです。仕事や学校、運転をする人にとって、これは大きなメリットです。アメリカのアレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の調査では、第二世代薬の継続使用率は85%と、第一世代の60%を大きく上回っています。
効果の発現は少し遅いです。服用して1~3時間後にピークに達します。そのため、「飲んだのにすぐ効かない」と感じて失望する人もいます。でも、これは「即効性」ではなく「持続性」を重視した設計です。花粉シーズンの前から予防的に飲むことで、症状の発生を防ぐことができます。2022年のメタアナリシスでは、第二世代薬の鼻炎症状改善率は60~70%、第一世代は50~60%でした。つまり、慢性のアレルギーには第二世代の方が優れているのです。
ただし、鼻づまりにはやや弱いです。約40%の患者は、第二世代薬だけでは鼻づまりが十分に改善せず、偽麻黄鹼(ニコデリン)などの鼻づまり用薬と併用する必要があります。2024年には、フェキソフェナジンと偽麻黄鹼を組み合わせた長期持続型製品が登場し、この課題への対応が進んでいます。
第一世代の薬は、ジェネリックが非常に安価です。100錠で4~6ドル程度(約600~900円)で買えます。薬局の奥に並んでいる、安価な風邪薬の成分として使われていることも多いです。
第二世代のジェネリックは、30錠で10~15ドル(約1,500~2,200円)します。ブランド薬は25ドル以上(約3,700円)になることもあります。保険が適用されない場合、この価格差は大きな負担になります。でも、1日1回で済むことを考えれば、1か月分のコストはそれほど差がありません。第一世代を1日3回飲むと、1か月で90錠必要になるので、実質的に1.5~2倍の量を買うことになります。
選ぶ基準は、あなたの生活スタイルと症状の種類です。
2023年のアメリカの処方データでは、70%以上が第二世代薬でした。医師の多くは、慢性のアレルギーには第二世代を「第一選択」と勧めています。でも、第一世代が「不要」になったわけではありません。特定の状況では、今でも最適な選択肢なのです。
2023年には、第二世代の新薬としてビラステイン(欧州ではIfirgaとして販売)が臨床試験で鼻づまり改善に優れた効果を示しました。日本ではまだ未承認ですが、今後、より効果の高い第二世代薬が登場する可能性があります。
また、第二世代の中でも、効果に差があります。セチリジン(サイレックス)は、目のかゆみや皮膚のかゆみに対して、ロラタジン(クラリチン)よりも15~20%高い効果を示す研究があります。一方、フェキソフェナジン(アレグラ)は胃腸への負担が少なく、消化器系が弱い人におすすめです。
2024年には、抗ヒスタミン薬の市場が52億ドル(約7,800億円)に達し、年率3.2%で成長しています。アメリカでは、成人の30%、子供の40%がアレルギーを抱えており、需要は今後も増え続けるでしょう。
Redditのアレルギーコミュニティでは、68%の人が「日中はサイレックスやクラリチンで、脳がぼーっとしない」と語っています。一方、Drugs.comの8,742件のレビューでは、52%の人が「ベナドリルはメラトニンより眠りが深い」と評価しています。
Amazonのレビューでは、第二世代薬の平均評価が4.2点、第一世代が3.8点でした。5つ星レビューの63%が「眠くならない」と言っています。一方、1つ星レビューの28%は「効き目が安定しない」と不満を述べています。
第一世代の良い点は、「急な発作にすぐ効く」(29%)、「夜の睡眠に最適」(52%)です。第二世代の良い点は、「毎日飲める」(37%)、「仕事に支障がない」(63%)です。
第二世代薬は「眠くならない」と思われがちですが、高用量では眠気が出ることもあります。FDAのラベルにも「推奨用量を超えると眠気のリスクが高まる」と明記されています。
また、第二世代薬は「即効性」がないので、花粉が飛ぶ季節の前に、1~2週間前から飲み始めるのがベストです。いきなり花粉が飛んでから飲んでも、効果が出るまでに時間がかかります。
薬局の薬剤師に相談すると、自分の症状に合った薬を教えてくれます。2023年の消費者報告調査では、78%の人が薬剤師と相談した経験があります。アメリカのアレルギー協会のアプリ「Allergy Relief」も、個人に合わせた服用スケジュールを提案してくれるので、おすすめです。
第二世代の抗ヒスタミン薬が全体的に安全です。第一世代は脳に届くため、眠気、集中力低下、認知機能の障害、高齢者では転倒や記憶障害のリスクがあります。第二世代は脳への侵入が少なく、副作用が圧倒的に少ないため、慢性のアレルギー治療には第一選択とされています。
はい、ベナドリル(ジフェンヒドラミン)は、日中に飲むと強い眠気を引き起こすため、基本的には夜だけの使用を推奨します。特にアレルギーで夜眠れない人や、風邪薬と一緒に使う場合に有効です。ただし、高齢者や車の運転をする人は、夜でも注意が必要です。長期間の使用は認知機能への影響が懸念されます。
第二世代の抗ヒスタミン薬は、鼻水やくしゃみ、目のかゆみにはよく効きますが、鼻づまりにはやや弱いです。約40%の患者は、鼻づまりを改善するために、偽麻黄鹼(ニコデリン)などの鼻づまり用薬と併用する必要があります。最近では、フェキソフェナジンと偽麻黄鹼を組み合わせた長期持続型製品が登場し、この問題への対応が進んでいます。
複数の研究で、サイレックス(セチリジン)はクラリチン(ロラタジン)よりも、目のかゆみや皮膚のかゆみ、鼻炎の症状に対して15~20%高い効果を示しています。ただし、胃腸への影響はサイレックスの方がやや強く、クラリチンは消化器系が弱い人におすすめです。個人の反応に合わせて選ぶのが大切です。
第二世代の抗ヒスタミン薬(サイレックス、クラリチン、アレグラ)は、2歳以上の子どもに安全に使用できます。第一世代は、子どもでも眠気や集中力低下のリスクが高いため、医師の指示がない限り、推奨されません。小児用の製剤は、体重に応じた用量が明確に記載されているので、必ず守ってください。
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