定期的な駆虫の重要性：メベンダゾールを検討すべき理由

志保 野口

なぜ定期的な駆虫が必要なのか

あなたは、自分や家族が寄生虫に感染している可能性を、真剣に考えたことがありますか？　多くの人が、寄生虫は発展途上国だけの問題だと信じています。でも、それは大きな誤解です。日本を含む先進国でも、毎年何十万人もの人が腸内寄生虫に感染しています。特に子どもやペットと暮らす家庭、生野菜をよく食べる人、川や湖で泳いだ経験のある人ほど、リスクは高くなります。

寄生虫は、目に見えない小さな生き物です。便の中に卵をまき散らし、手や食べ物を通じて体内に入ります。症状は軽いものから、腹痛、下痢、栄養不良、成長障害、貧血までさまざま。でも、多くの場合、まったく症状が出ません。だからこそ、気づかないうちに感染が広がってしまうのです。

メベンダゾールとはどんな薬か

メベンダゾールは、世界保健機関（WHO）が推奨する、寄生虫駆除のための基本薬です。1970年代から使われており、安全性と効果が長年にわたって確認されています。この薬は、回虫、鉤虫、鞭虫、糸状虫などの主な腸内寄生虫に効果があります。

メベンダゾールの仕組みはシンプルです。寄生虫の細胞がグルコースを吸収するのを妨げ、エネルギーを奪います。結果、虫は動けなくなり、数日以内に体内から排出されます。1回の服用で十分な効果が得られることが多く、子どもから大人まで使いやすい薬です。

日本では、市販薬として販売されていませんが、医師の処方で手に入れることができます。多くの国では、学校や保健所が定期的に集団駆虫を実施しており、子どもたちの健康と学習能力の向上に貢献しています。

誰がメベンダゾールを検討すべきか

必ずしも症状が出ていないからといって、駆虫が必要ないわけではありません。次の条件に当てはまる人は、特に検討すべきです：

• 子どもがいる家庭（特に保育園や小学校に通っている）
• ペット（猫や犬）を飼っている
• 生野菜や果物を洗わず食べることが多い
• 川や湖で泳いだ経験がある
• 過去に寄生虫感染の診断を受けたことがある
• 慢性的な腹痛や食欲不振、疲労感がある

特に子どもは、手を口に入れる習慣があり、寄生虫卵に触れやすいです。感染しても自覚症状が少なく、親が気づかないまま数年間、体内で寄生虫が増殖することもあります。それが原因で、栄養が十分に吸収されず、身長の伸びが遅れたり、集中力が低下したりするケースも実際に報告されています。

メベンダゾールの使い方と注意点

メベンダゾールは、通常1回100mgを2回、1日おきに服用します。または、医師の指示で1回だけの服用で済むこともあります。食事の有無に関わらず服用できますが、脂肪分の多い食事と一緒に飲むと吸収がよくなる場合があります。

副作用は非常に少ないですが、まれに腹痛、吐き気、頭痛が起こることがあります。アレルギー反応はほとんど報告されていません。ただし、妊娠中や授乳中の方は、医師と相談の上でのみ使用してください。また、肝臓の病気がある人や、他の薬を長期間服用している人も、事前に医師に伝える必要があります。

重要なのは、メベンダゾールを「症状が出たときだけ」飲むのではなく、「リスクがあるなら定期的に」使うことです。1年に1回、家族全員で駆虫を行うことで、感染の輪を断ち切ることができます。

寄生虫感染を防ぐための日常の習慣

薬だけに頼らず、予防が最も効果的です。次の習慣を身につけるだけで、感染リスクは大きく減ります：

1. 手洗いを徹底する。特にトイレの後、食事の前、ペットに触れた後は石けんで20秒以上洗う。
2. 野菜や果物は流水でよく洗う。生で食べる場合は、塩水や食酢で軽くつけ置きする。
3. ペットの糞はすぐに片付ける。犬や猫の糞には回虫の卵が含まれていることが多い。
4. 水道水以外の水（川、湖、井戸）は飲まない。泳いだ後は体をよく洗う。
5. 子どもには、土や砂に触れた手で口や鼻を触らせないよう注意する。

これらの習慣は、メベンダゾールの効果を最大限に引き出します。薬で一時的に虫を退治しても、また同じ環境で生活していれば、再感染は避けられません。

定期駆虫のメリット：健康と経済の両面

寄生虫の駆除は、単なる「健康対策」ではありません。経済的なメリットもあります。

子どもが寄生虫に感染していると、学校を休む頻度が増えます。また、栄養吸収が悪いため、成長に必要なビタミンやミネラルが不足し、補助食品やサプリメントの出費が増えることもあります。さらに、長期化すると慢性の貧血や消化器疾患に発展し、医療費が膨らむリスクがあります。

一方、メベンダゾール1回分の費用は、数百円程度です。1年に1回、家族全員で駆虫を行うと、年間数千円の出費で、数年分の医療費と時間の損失を防げます。これは、健康投資として非常に高いリターンがあります。

メベンダゾールと他の駆虫薬の違い

市場には、ピランテル、アルベンダゾール、ピラントールなど、他の駆虫薬も存在します。それぞれの違いを理解すれば、より適切な選択ができます。

ピラントルは市販薬として手に入りやすく、軽度の感染には便利ですが、効果の幅が狭いのが弱点です。メベンダゾールは、複数の寄生虫に広く効く点で、家族全体の予防には最適です。

医師に相談するときのポイント

メベンダゾールを処方してもらうには、医療機関を受診する必要があります。その際、次の情報を伝えると、より正確な診断と処方ができます：

• 家族に寄生虫感染の歴史があるか
• 最近、下痢や腹痛、便に虫がいた経験があるか
• ペットの飼育状況
• 生野菜や川の水の摂取頻度
• 過去に他の駆虫薬を使った経験

医師は、便検査を勧めるかもしれません。でも、症状がなくても、リスクが高いと判断されれば、検査なしで処方してくれることもあります。寄生虫は「見つからない＝いない」ではありません。予防のための処方は、十分に意味があります。