低パラトルモン血症は、副甲状腺ホルモン(PTH)が十分に作られない稀な内分泌疾患です。この病気では、血液中のカルシウムが低下し、リンが上昇します。症状としては、指先や口の周囲のしびれ、筋肉のけいれん、疲労感、不整脈などが現れます。多くの場合、甲状腺や首の手術後に起こり、約75~90%の症例が手術によるものです。遺伝的疾患や自己免疫疾患、放射線治療でも発症することがあります。
治療の基本:カルシウムと活性型ビタミンD
低パラトルモン血症の治療は、カルシウムと活性型ビタミンDの補充が中心です。これは、PTHを直接補う治療ではなく、PTHの働きを代用する方法です。現在の標準治療は、生涯にわたって継続する必要があります。
カルシウムの補充は、1日1,000~2,000mgを数回に分けて食事と一緒に摂るのが基本です。カルシウムは食事と一緒に摂ることで吸収が良くなり、同時にリンの吸収を抑える働き(リン結合剤としての効果)もあります。カルシウム補助剤としては、炭酸カルシウムが推奨されます。これは、1gあたり40%の元素カルシウムを含み、他の形態(例:クエン酸カルシウム)よりも効率的にカルシウムを供給できます。1日2~3回、食事中に1,250~2,500mgの炭酸カルシウムを摂取することで、必要な元素カルシウム(500~1,000mg)を補えます。
活性型ビタミンD(カルシトリオールやアルファカルシドール)は、通常0.25~0.5マイクログラム/日から始めます。これは、腎臓で活性化される必要がないため、PTHが不足している人でも直接作用できます。通常のビタミンD3(コレカルシフェロール)では、PTHがないと活性化されず、効果が得られません。研究では、カルシトリオールがビタミンD3よりも2.3倍速くカルシウム値を改善することが示されています。
目標値:血中カルシウムは低めに保つ
治療の目標は、症状をなくすことだけではありません。腎臓へのダメージを防ぐことも重要です。血中カルシウムの目標は、正常範囲の下限~中間値(8.0~8.5mg/dL、または2.00~2.12mmol/L)に保つことです。正常値は8.5~10.2mg/dLですが、これを超えると尿中にカルシウムが過剰に排泄され、腎臓結石や腎機能障害のリスクが高まります。
パラトルモンUKのデータでは、長期的に2.00~2.25mmol/Lを維持することで腎臓の保護が最も効果的とされています。しかし、この範囲を維持するのは難しい患者が30~40%もいるのが現実です。血中カルシウムが2.35mmol/Lを超えると、15年後に脳の基底核に石灰化が生じるリスクが2.8倍になるという報告もあります。
重要な検査:尿中カルシウムとマグネシウム
治療を進める上で、血中カルシウムだけをチェックするのは不十分です。最も重要なのは、24時間尿中カルシウム排泄量です。目標は250mg以下(6.25mmol以下)です。この値が高いと、腎臓結石や腎不全のリスクが5~7倍に跳ね上がります。そのため、治療を増量する前には必ず尿検査を実施する必要があります。
また、マグネシウムも見逃せません。マグネシウムが不足すると、PTHの分泌や作用がさらに悪化します。血中マグネシウムの目標は1.7~2.2mg/dLです。1.7mg/dL以下になると、補充が必要です。マグネシウム補助剤としては、酸化マグネシウム(400~800mg/日)やクエン酸マグネシウム(200~400mg/日)が使われます。クエン酸マグネシウムは、便秘を起こしにくいという利点があります。
食事の注意点:リンを減らす
カルシウムを取るだけでなく、リンの摂取を制限する必要があります。リンが高いと、カルシウムとリンが体内で結合して血管や臓器に石灰化を引き起こします。1日のリン摂取量は800~1,000mgを目安にします。
避けるべき食品:
- 炭酸飲料(1リットルあたり約500mgのリン酸)
- 加工肉(1食あたり150~300mg)
- ハードチーズ(1オンスあたり約500mg)
摂って良い食品:
- 牛乳(1杯で約300mg)
- ケール(1カップで約100mg)
- ブロッコリー(1カップで約43mg)
カルシウム補助剤を食事と一緒に摂ることで、リンの吸収を抑える効果も期待できます。
治療がうまくいかないとき:別の選択肢
多くの患者(60~70%)は、カルシウムと活性型ビタミンDで症状をコントロールできます。しかし、30~40%の患者は、治療が難しいとされています。以下のような状況では、治療法を見直す必要があります:
- 1日2g以上のカルシウムを必要とする
- 1日2μg以上の活性型ビタミンDが必要
- 尿中カルシウムが高くて、食事制限や薬で改善しない
- 1日に6~10錠の薬を飲むのが日常になり、生活の質が低下している
このような場合、再構成ヒトPTH(1-84)(ナットパラ)やテリパラチド(フォルテオ)というPTH補充療法が検討されます。これらは毎日皮下注射で投与し、カルシウムやビタミンDの用量を30~40%減らせる効果があります。しかし、ナットパラは2019年に一時販売中止になり、2020年にリスク管理プログラム(REMS)の下で再販されました。価格も高く、1か月で約15,000ドル(約220万円)かかります。一方、通常の治療は1か月100~200ドル(約1.5~3万円)程度です。
新しい治療として、TransCon PTHという長時間作用型PTH製剤が2022年の臨床試験で注目されています。1日1回の注射で、89%の患者で血中カルシウムが正常化しました。これは、現在の治療よりもはるかに簡便で、今後の標準治療になる可能性があります。
患者のリアルな声:「カルシウムの乗り物」
412人の患者を対象とした調査では、68%がカルシウム値の安定化に苦労していると答えました。52%は、治療していても毎日のように症状(しびれ、疲労)を感じています。多くの人が「カルシウムの乗り物」と呼ぶ、値が上下して体調が安定しない状態に悩んでいます。
また、高用量のカルシウム薬は、45%の人に便秘を引き起こします。薬の数が多く、毎日数回に分けて飲むのが負担になることもあります。Redditの患者コミュニティでは、PTH治療薬の処方までに30~45日かかるという話もよくあります。保険の承認手続きが長いのです。
一方で、効果的だった方法も報告されています。たとえば、1日2~3回の服用ではなく、4~5回に分けて少量ずつ摂ると、値の安定が良くなったという声があります。また、マグネシウムを1.9mg/dL以上に保つことで、低カルシウムの発作が35%減ったという臨床データもあります。
かかりつけ医と専門医の役割
初期の治療は、内分泌専門医が3~4回の診察で薬の量を調整します。その後、安定すれば、1年に3~4回の検査で十分です。しかし、日本では、78%の一般医が低パラトルモン血症の管理に自信がないと感じています。そのため、安定した患者はかかりつけ医が管理し、問題が起きたときに専門医に相談する体制が望ましいです。
患者自身が知っておくべきことは:
- 口の周りのしびれ、手足のけいれんは、低カルシウムのサイン
- 薬は食事と一緒に(カルシウム)、寝る前に(ビタミンD)摂る
- 急にしびれが強くなったときは、カルシウム錠を2~3錠(500~1,000mg)を噛んで飲む
今後の展望:未来の治療
現在の治療は、症状を抑えることはできますが、根本的な治癒には至っていません。今後の研究では、遺伝子治療が注目されています。特に、カルシウム感受性受容体(CaSR)をターゲットにした治療法がマウス実験で有効な結果を出しています。しかし、人への臨床試験は2026年以降になる見込みです。
また、10年以上経過した患者の15~20%が、腎機能が3期以上低下しているというデータもあり、長期的な腎臓保護が大きな課題です。今後は、単にカルシウムを上げるだけでなく、腎臓や血管の石灰化を防ぐバランスの取れた管理が求められます。
低パラトルモン血症は治りますか?
現在のところ、低パラトルモン血症は完全に治すことはできません。副甲状腺の機能が失われた場合、ホルモンの自然な回復は期待できません。しかし、カルシウムと活性型ビタミンDの適切な管理により、症状をほぼ完全にコントロールし、正常な生活を送ることは可能です。治療は生涯続くため、継続的な自己管理が重要です。
カルシウムをたくさん取ると腎臓に悪いですか?
はい、過剰なカルシウム摂取は尿中にカルシウムを多く排泄させ、腎臓結石や腎機能低下のリスクを高めます。特に1日2g以上の元素カルシウムを摂取すると、心血管疾患のリスクも20~30%上昇する可能性があります。治療の目標は、カルシウム値を「正常」に保つことではなく、「低めの正常範囲」に保つことです。腎臓を守ることが、長期的な健康の鍵です。
ビタミンD3(コレカルシフェロール)は効果がありますか?
単独では効果がありません。低パラトルモン血症では、腎臓でビタミンDを活性化するためのPTHが足りないため、D3をとっても活性型に変換されません。そのため、カルシトリオールやアルファカルシドールといった「すでに活性化された形」のビタミンDを用います。ただし、D3を少量(400~800IU/日)併用することで、25-ヒドロキシビタミンDのレベルを適正に保つ助けになります。
マグネシウム不足はなぜ問題ですか?
マグネシウムは、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌する細胞の働きに必要です。マグネシウムが不足すると、PTHの分泌がさらに減り、カルシウム値が下がりやすくなります。また、PTHが存在しても、マグネシウムが足りないと骨や腎臓でのカルシウムの調整がうまくいきません。そのため、マグネシウム値が1.7mg/dL以下なら、補充が必要です。
PTH補充療法は日本で受けられますか?
現在、ナットパラ(再構成ヒトPTH)は日本では承認されておらず、一般的には使用できません。テリパラチド(フォルテオ)は骨粗鬆症の治療薬として認可されていますが、低パラトルモン血症への適応は限定的です。海外で治療を受けたい場合は、医師と相談し、特別な承認手続きが必要になります。今後、TransCon PTHなどの新しい薬が日本でも臨床試験を開始すれば、選択肢が広がる可能性があります。
コメント
naotaka ikeda
2 12月 2025カルシウムの摂り方、食事と一緒にってのは本当によく言われるけど、実際は朝昼晩と分けて飲まないとすぐ尿中で排出されちゃうんだよね。1回に大量に飲んでも意味ないよ。
HIROMI MIZUNO
3 12月 2025マグネシウム補充、クエン酸がおすすめって書いてあるけど、本当に便秘しにくいし、吸収も良いから試してみて!私も1.9mg/dL超えた瞬間、手のしびれが全然減った!
薬増やさなくても体が楽になるんだよ、ほんと助かる!
Ryo Enai
4 12月 2025ナットパラが日本で使えないって、アメリカの製薬会社が日本を支配してる証拠だよ。政府と医者と製薬会社の陰謀だよね?
Mariko Yoshimoto
6 12月 2025『活性型ビタミンD』と書くべきところを、『活性型ビタミンD』と誤字してますね…? 『カルシトリオール』のスペルも、正確に『calcitriol』と書かないと、学術的に問題です。
晶 洪
7 12月 2025薬を飲む人生は、人生じゃない。自然に生きろ。
諒 石橋
9 12月 2025海外の薬が優れてるって言う奴ら、日本は世界一の医療技術を持ってるんだよ。ナットパラなんて、アメリカの実験的なゴミだ。日本で治療できないのは、それが安全じゃないからだ。
risa austin
9 12月 2025本稿は、内分泌学的知見に基づき、厳密な臨床データをもとに構成されており、極めて高水準の医学的整合性を有しております。読者諸氏には、その内容を深く咀嚼され、適切な判断を下されますよう、謹んでお願い申し上げます。
aya moumen
9 12月 2025でも…本当に、毎日6錠も飲むの、辛いですよね…?
朝はカルシウム、昼はビタミンD、夜はマグネシウム…
でも、薬を忘れた日は、手がピクピクして…泣きそうになるんです…
Taisho Koganezawa
11 12月 2025PTHが欠けてるってことは、体が『カルシウムを守る』という自然なシステムを失ってる。でも、それを薬で補うってのは、自然のリズムを無視してるんじゃないのか?
体は、本来、ホルモンでバランスを取るようになってる。人工的な代替は、本当に長期的に安全なのか?
僕らは、治すんじゃなくて、管理してるだけ。それは、進化なのか、退化なのか?
JP Robarts School
12 12月 2025TransCon PTHって、実はもう2023年から日本で臨床試験始まってて、厚労省は2025年に承認するつもりだよ。でも、メディアは一切報じてない。なぜかって?
製薬会社が、今使ってる薬の利益を守りたいからだ。カルシウム錠は、毎月1000円で売れてる。TransConは、月220万円。どっちが儲かるか、誰でもわかるよね?
Kensuke Saito
13 12月 2025尿中カルシウム250mg以下って基準、誰が決めた?
文献を引用しろ。
WHO?
NIH?
日本内分泌学会?
出典なしの数字は、迷信だ。
Rina Manalu
14 12月 2025私の母も低パラトルモン血症で、10年間、毎日5錠飲んでいます。
最近、4回に分けて飲むようにしたら、夜のけいれんが全くなくなりました。
本当に、少量ずつが大事です。
お母さん、お疲れ様でした。
依充 田邊
15 12月 2025『カルシウムの乗り物』って、誰が命名したんだ?
まるで、人生が電車の座席みたいに、上下して揺れてるってことだよね。
でもね、この病気、実は『カルシウムのスリル』って呼ぶべきだよ。
毎日、血中カルシウム値をスリルで楽しんでるんだよ、患者は。
100mg下がったら、手がしびれる。100mg上がったら、腎臓が泣く。
最高のサバイバルゲームだよね?
笑えるでしょ?
いや、笑えない?
それ、あなたが薬を飲んでないからだよ。
Shiho Naganuma
15 12月 2025日本は、海外の薬を承認しないのは、国民を守るためだ。アメリカの薬は、副作用で死ぬ人が多い。日本の医療は、世界一安全。だから、ナットパラはいらない。日本は、自分たちのやり方で進むべき。