バイオシミラーとは、既に承認された生物由来の医薬品(バイオ薬)とほぼ同じ効果・安全性を持つ後発医薬品です。化学的に合成されたジェネリック薬とは異なり、細胞培養で作られるため、製造が極めて複雑です。でも、価格は元の薬より15~30%安く、医療費の削減に大きく貢献しています。世界中の医療システムがバイオシミラーに注目する中、ヨーロッパとアメリカの市場は、まったく違う道を歩んできました。
ヨーロッパは2006年からリード
ヨーロッパは、世界で最初にバイオシミラーの認可制度を整えた地域です。2006年、欧州医薬品庁(EMA)が世界初のバイオシミラー「オムニトロープ」を承認しました。それ以来、ドイツ、フランス、英国を中心に、医療現場での導入が進みました。病院の調達制度や、薬剤師による自動置換(サブスティテューション)政策が、市場の拡大を後押ししました。
特に、がんやリウマチの治療に使われるモノクローナル抗体薬では、いくつかの国でバイオシミラーの市場シェアが80%以上に達しています。EMAは「総合的証拠」に基づく審査を採用し、臨床試験の必要量を最小限に抑えました。これにより、開発サイクルが短く、企業が次々と市場に参入できる環境が整いました。
2024年のヨーロッパのバイオシミラー市場規模は、131億6千万ドル(Precedence Research)と推定されています。2020年から2024年まで、年平均成長率(CAGR)は13%。ドイツは製造拠点としても世界的に有名で、サンドーズ(ノバルティス)、フレーゼニウス・カビ、アンジェンなどの大手企業がここで生産を展開しています。
アメリカは遅れて、今、急成長中
アメリカは、2009年にバイオシミラーの法的枠組み(BPCIA)を整備しましたが、実際の承認は2015年まで待たなければなりませんでした。最初に承認されたのは「ザルクシオ」(フィルグラスチム)で、白血球を増やす補助療法薬でした。この遅れの原因は、特許の壁と製薬大手の訴訟戦略でした。
元の薬のメーカーは、バイオシミラーの市場参入を防ぐために「特許ダンス」と呼ばれる複雑な法的手続きを繰り返し、訴訟を長引かせました。結果、2024年時点でアメリカではわずか12製品しか市場に出回っていません。一方、ヨーロッパでは2006年以降に100製品以上が承認されています。
しかし、2024年6月、FDAは大きな方針転換を発表しました。それまで、バイオシミラーが「代替可能(interchangeable)」と認定されるには、患者が元の薬から切り替えた際の追加臨床試験が必要でした。この要件は、製造コストを押し上げ、市場参入を難しくしていました。FDAはこの要件を廃止し、ヨーロッパのアプローチに近づけました。
さらに、2022年のインフレ抑制法(IRA)で、メディケアDの「ドーナツホール」(自己負担上限)がなくなり、バイオシミラーの使用が経済的に有利になりました。これにより、2024年のアメリカ市場は109億ドルに達し、2020年から年11%成長。IMARCグループは、2033年までに302億ドルにまで膨らむと予測しています。
市場の違いは、制度と文化
ヨーロッパとアメリカの最大の違いは、医療制度の構造です。
ヨーロッパでは、EMAが欧州全体で一括承認し、各国が価格設定と保険給付を決めます。病院がまとめて薬を調達するため、価格が下がれば一気にバイオシミラーに切り替わります。医師や患者も、長年の経験からバイオシミラーを信頼しています。
アメリカは、FDAの承認の後、CMS(メディケア・メディケイドサービス)や民間保険会社がそれぞれ独自に処方箋リスト(フォーミュラリー)を決めます。そのため、一つの薬が全国で使えるとは限りません。医師は「元の薬のほうが安心」と考える傾向が強く、患者教育も遅れていました。
しかし、最近は状況が変わり始めています。アダリムマブ(ヒュミラ)のような年間売上100億ドル超の「ビッグブロッカー」が特許切れを迎えたことで、14製品のバイオシミラーが承認されました。そのうち6製品はすでに販売中です。製薬大手のファイザー、メルク、サムスン・バイオエピスが積極的に参入し、市場を牽引しています。
今後の展望:アメリカが追い抜く日
2025年現在、ヨーロッパが世界のバイオシミラー市場の最大規模を保っていますが、2027年には北米(主にアメリカ)がそれを上回ると予測されています。Grand View Researchは、北米市場が2027年までに172億ドルに達すると見込んでいます。
理由は単純です。アメリカには、今後10年で2320億ドルの市場価値を持つ118種のバイオ薬が特許切れを迎える予定です。ヒュミラの次は、インフリキシマブ、エタネルセプト、レクレアなど、高価な自己免疫疾患薬が続きます。これらはすべて、ヨーロッパで既にバイオシミラーが主流になっている分野です。
一方、ヨーロッパも成長を続けています。2034年までに648億ドルの市場規模になると予測されており、成長率は17.34%。しかし、アメリカの成長率は18.5%と、やや速いペースです。両地域とも、次世代の複雑なバイオ医薬品の開発や、医療従事者への教育が課題ですが、方向性は明確です。
結論:バイオシミラーは、医療費を救う鍵
ヨーロッパは「先駆者」、アメリカは「後発だが加速中」です。ヨーロッパは制度と経験でリードし、アメリカは巨大な市場と法的変更で追い上げています。
どちらの地域でも、バイオシミラーは「安くて効果が同じ」薬として、患者と医療システムの両方を救う存在です。特に、がんや関節リウマチ、糖尿病の治療では、年間数十万円の薬代が半分以下になる可能性があります。今後、アメリカでさらに多くのバイオシミラーが登場すれば、世界の医療費は大きく変わることになります。
バイオシミラーとジェネリック薬の違いは何ですか?
ジェネリック薬は、化学的に合成された分子構造が完全に同じ薬です。一方、バイオシミラーは、細胞で作られる巨大なタンパク質で、元の薬と「ほぼ同じ」ですが、完全に同じではありません。製造プロセスが複雑なため、微細な違いは出ますが、臨床的に意味のある違いはないと認められれば承認されます。
アメリカでバイオシミラーが遅れた理由は何ですか?
主に3つの理由があります。第一に、元の薬メーカーが特許を長く守ろうと訴訟を起こしたことです。第二に、FDAが「代替可能」と認定するのに、患者の切り替え試験を強制していたことです。第三に、医療制度が分散しており、保険会社や病院がバラバラに判断していたため、導入が遅れたのです。
ヨーロッパはなぜ成功したのですか?
EMAが早期に明確な基準を出し、臨床試験の負担を減らしました。さらに、病院が一括調達し、薬剤師が自動でバイオシミラーに置き換える制度が整っていたため、医師も患者も安心して使える環境ができました。信頼が、市場の拡大を支えました。
2024年のFDAの変更は何を変えましたか?
それまで、バイオシミラーが「代替可能」となるには、患者が元の薬から切り替えた後の安全性を確認する追加臨床試験が必要でした。この試験は数百万ドルかかり、開発を難しくしていました。2024年6月、FDAはこの要件を廃止し、分析データと非臨床データだけで代替可能認定を出せるようにしました。これはヨーロッパのやり方に近づいた大きな変更です。
今後、どの薬がバイオシミラーになる可能性が高いですか?
ヒュミラ(アダリムマブ)の次は、インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)、レクレア(アダリムマブの他の製剤)、そしてインスリンやエリスロポエチンなどの内分泌・血液疾患薬が次々と特許切れを迎えます。これらの薬は、年間数百億円の売上があり、バイオシミラーの導入で医療費が大幅に削減される見込みです。
コメント
Kensuke Saito
26 11月 2025バイオシミラーって結局、元の薬と完全に同じじゃないんだよな。微細な違いが臨床的に意味がないって誰が決めたんだ?
aya moumen
27 11月 2025えーっと…本当に安心して使えるのかな…?私は、薬の効果が少しでも違うと、怖くて使えないの…。でも、でも、医療費が下がるなら、ちょっとだけ…頑張って使ってみようかな…?
Akemi Katherine Suarez Zapata
28 11月 2025アメリカのFDAがやっとまともな判断をしたね。でも、特許ダンスとか、もうちょっと早く対応してほしかったな。日本の薬局でも、もっとバイオシミラーを勧めてくれたらいいのに。
芳朗 伊藤
30 11月 2025ヨーロッパの成功は、単に制度が整ってたから。アメリカは、医療業界が腐りきってた。特許で儲けるのが目的で、患者のためじゃない。これ、資本主義の末路だ。
ryouichi abe
1 12月 2025バイオシミラーって、ジェネリックと違って、細胞で作るから、品質管理がめっちゃ大変なんだよね。でも、ちゃんと検証されてるなら、安心して使えると思う。みんなで広めようよ。
Yoshitsugu Yanagida
2 12月 2025アメリカが追いついた?いや、ただ、元の薬が高すぎて、もう金持ちしか買えなくなってたから、仕方なく変えただけだよ。本当の改革じゃない。
Hiroko Kanno
4 12月 2025ちょっと、『代替可能』って言葉、ちょっと怖いな…。でも、ちゃんとデータ見てるなら、信じてもいいかも。薬剤師さん、ちゃんと説明してくれないと…。
kimura masayuki
5 12月 2025日本はなぜこんなに遅れてる?アメリカもヨーロッパも、もう既に進んでるのに。日本は、いつまで国際的後進国でいるつもりだ?医療も、もっと国際基準に合わせろ!
雅司 太田
7 12月 2025俺の母がリウマチでヒュミラ使ってた。値段が半分になれば、本当に助かる。医療費、もう少し何とかならないかな。
Hana Saku
8 12月 2025『ほぼ同じ』って、曖昧すぎる。医学で『ほぼ』なんて言葉を使うべきじゃない。ちゃんと『同じ』か『違う』か、はっきりしろ。この記事、信頼できない。
Mari Sosa
8 12月 2025バイオシミラー、日本でももっと認知されれば。薬の価格、下がれば、みんなが治療を受けられるようになる。それが、本当の優しさじゃない?
kazu G
9 12月 2025本件、欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)の承認基準の変遷を比較検討した結果、制度的インセンティブの差異が市場拡大の主因であることが明確である。臨床試験要件の緩和は、開発コストの大幅な削減を可能とした。